健常右利き若年男性5名を対象として、ポジトロンCT及び脳磁図による脳機能計測を行った。ポジトロンCTでは、さまざまな人の顔の写真をコンピュータにより提示し、それらの顔が既知の人のものか、未知の人のものかを弁別する課題遂行中の脳血流の変化を測定し、コントロール課題と比較した。脳磁図では、既知の顔、未知の顔の提示に関連した、脳磁界の変化を計測した。 ポジトロンCTデータは、被験者個人ごとに統計解析を行い、脳賦活地図を作成した。脳磁図データは、ポジトロンCTデータとの重ねあわせを行うために、2つの異なった方法による解析を試みた。まず、ポジトロンCTによる脳賦活地図を利用して、脳賦活の認められた領域内にのみ双極子を強制的に推定させた。ついで、被験者の脳表面にポジトロンCTデータと同程度の空間解像度をもつ機能単位を想定し、その上に脳磁図データを展開する、BET(Brain Emission Tomography)と呼ばれる手法を用いた。 ポジトロンCTデータより、顔の既知・未知の弁別には、外側後頭葉、側頭葉下面、側頭葉内側面、側頭極に脳賦活を認めた。脳賦活領域上に双極子を計算する方法では、側頭葉下面、外側後頭葉、側頭葉内側面に、それぞれ画像提示後160、180、200ミリ秒後に活動が計算できた。側頭極では計算が発散してしまい双極子は同定できなかった。BETでは、外側後頭葉と側頭極にそれぞれ画像提示後200、270ミリ秒後に脳賦活を認めた。 ポジトロンCT画像情報とBETの情報は、違いに独立なため、これらの画像情報の融合を数学的に行うことにより、脳活動の時空間パターンは検討可能と思われた。
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