Research Abstract |
神経細胞の老化・死やアルツハイマー病(ALZ)の病態発現に細胞膜ラフトとERストレスが如何に関与するか,又そこを標的とした新規治療法の開発を目的として研究を進めた.本研究ではヒト神経芽細胞腫由来のSH-SY5Yと同細胞に野生型および変異型PS1を過剰発現する細胞を用い1)細胞膜ラフトに存在することが知られている神経栄養因子受容体(Trk family)がどのTypeのTrkが発現するかを検討し,2)発現が確認できたTrkAについて,そのリガンドであるNGFに対する反応性を抗TrkA抗体を用いた免疫沈降法-Western blot法で調べた.3)ラフトを破壊する薬剤のHMG-CoA還元酵素阻害薬(HCRI)およびERストレス誘発剤のTunicamycinで前処理した際の同細胞系への影響の差異を検討した.4)TrkAの細胞内分布とくに細胞膜内での局在を蔗糖密度勾配法-Western blot法で検討した.5)PS1の突然変異がもたらす細胞内脂質への影響をみるため,^<14>C-palmitic acidでwhole cell labellingを行い脂質分析を行った.その結果,1)mockおよび野生型,変異型PS1を過剰発現した同細胞系には少なくともTrkAが発現しており,変異型野性型には差異はなかった.2)変異型に発現するTrkAはNGFに対しその自己燐酸化反応が野生型に比し低下しており,3)これら薬剤に対し野生型に比べ明らかにsensitveであった.4)野生型,変異型ともTrkAはhigh density fractionに分布し,少数がラフトに分布していた.5)変異型では,とくにcomplex gangliosideの生合成が障害されていた.以上の事実は,PS1の突然変異は神経細胞を死から防御するシグナル伝達系を障害している可能性を示唆している.向後,ラフトとの関連でこの分子メカニズムを解明していきたい.
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