Research Abstract |
1.光学的イメージング法による新生大脳皮質の細胞タイプ別GABA作用と神経回路機能の解析: Cl^-感受性蛍光色素MEQ、Ca^<2+>感受性蛍光色素fura-2をラット脳スライスに負荷し、[Cl^-]_iと[Ca^<2+>]_iの光学的測定を行った。発達初期の大脳新皮質のcortical plate neuronでは、生後4日までの[Cl^-]_iが約35mMと高値であったが発達とともに低下し、生後3週の錐体細胞では約7mMに激減した。bumetanideやfurosemideの作用を解析した結果、Na^+,K^+-2Cl^- cotransporterによるCl^-取り込みがK^+-Cl^- cotransporterによるCl^-汲み出しに勝るため未熟な錐体細胞では[Cl^-]_iが高値であると考えられた。また、cortical plateや生後1週の皮質層では、浅層の細胞で深層の細胞より[Cl^-]_iが高い傾向があったが、生後2週でその差は消失した。これらの細胞では生後10日以前ではGABAによりCl^-流出(=脱分極)とCa^<2+>流入(=興奮)が惹起されるが、それ以降ではCa^<2+>流入は起こらないことが明らかとなった。 2.分子生物・電気生理的手法による新生大脳皮質のCl^-ホメオスタシス関連遺伝子発現と機能の解析: 外向きK^+-Cl^- cotransporterのKCC1,KCC2;内向きNa^+,K^+-2Cl^- cotransporterのNKCC1;整流性Cl^-チャンネルのClC2のmRNAの発現状態をin situ hybridization法とsingle-cell multiplex RT-PCR法を用いて解析した。KCC2は生後発達とともに増加し、2週目では浅層で強く発現していた。NKCC1の発現は逆に発達とともに減少するが、生後2週までは浅層で強く発現し、その後その局所的な差が無くなるとともに発現量そのものも激減した。tangential sliceを作成して確認したCajal-Retzius cellでは[Cl^-]_iは約38mMと高値で、taurineやglycineによりCl^-流出による脱分極が惹起された。bumetanide処置により[Cl^-]_iが有意に減少することから、Na^+,K^+-2Cl^- cotransporterによるCl^-取り込みがこの[Cl^-]_i高値に関与していることが示唆された。スライスパッチクランプ法でI_hを確認しCajal-Retzius cellを同定した後、細胞内容を電極内に吸引採取し、single-cell multiplex RT-PCR法を行い、Cl^-ホメオスタシス調節遺伝子の発現解析を行った。
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