Research Abstract |
Nogo受容体の性質:当初試みたパニング法ではNogo結合蛋白質は得られなかったが、アルカリホスファターゼ(AP)とNogo細胞外領域との融合蛋白質(APNext)をプローブに用いると、マウス胎仔17日大脳皮質由来の培養神経細胞に結合を認めた。別グループによりAPとNogoの融合蛋白質を用いた同様の手法でGPIアンカー型の膜蛋白質がNogo受容体として報告された。この受容体はAPNextにKd=7nM程度の親和性を持つ。しかしGPI部分を取りAP融合にした受容体はNogo全長を発現させたCOS-7細胞には結合しない。このように同定された受容体とリガンドとの関係はまだ明確でない。いくつかのクラス3セマフォリン(3A,3E)はC末端にある塩基性アミノ酸に富む領域を介してKd=30nM程度の親和性でこのNogo受容体に結合する。従ってこの受容体は抑制シグナルに対する共通の結合蛋白質である可能性が示唆された。 Semaphorin受容体の情報伝達の検討:クラス3セマフォリンはNeuropilinとPlexinの複合体を介して成長円錐の退縮反応を引き起こす。LAR型チロシンホスファターゼ(PTPase)が関与する可能性を検討した。LAR型PTPaseに属するLAR,PTPδ,PTPσすべてがSema3A受容体であるNeuropilin-1やPlexin-A1と複合体を形成した。そしてPTPaseの細胞内領域を欠いた変異体でも複合体を形成することから、細胞外領域での相互作用と考えられた。このPTPase欠失変異体をニワトリ胚7日齢の脊髄後根神経節細胞(DRG)に発現させると、PTPδ変異体のみがSema3Aによる退縮反応を部分的に阻害した。さらにホスファターゼ部位を不活化したPTPδ変異体にも同様の抑制効果が認められた。これはLAR型PTPaseのうちPTPδがホスファターゼ活性を介してSema3Aの情報伝達機構に関与していることを示唆する。チロシンキナーゼのfynが欠失した変異マウスのDRGで部分的にSema3A応答が低下していた。HEK293T細胞ではfynはPlexin-A2をリン酸化した。そのリン酸化はNeuropilin-1との共発現により増加した。
|