Research Abstract |
A.癌抑制遺伝子機能を有するc-Myc結合タンパク質MM-1の機能解析 c-Mycの転写活性化領域に結合し,転写抑制するタンパク質としてcDNAクローニングしたMM-1(Mori et al.,JBC,1988)は全長163アミノ酸を有する.リンパ腫,白血病,扁平上皮癌由来の培養細胞,癌患者由来のMM-1は157番目のアミノ酸が,癌細胞由来のMM-1の33%でAla→Thr,Argに変異していた.正常MM-1によるc-MycのRasとの協調的細胞癌化,細胞増殖能の抑制を,この変異MM-1は解除することから,MM-1はtumor suppressorの可能性が示唆された. 更に,MM-1結合タンパク質として転写co-repressorであるTIF1βが同定された.MM-1-TIF1β複合体にはc-Mycに加え,HDAC1,mSln3が含まれており,MM-1のc-Mycの転写能抑制はHDAC1阻害剤であるYSAにより阻害された.また,TIF1βのMM-1結合領域のみはdominat negative体として作用し,MM-1のc-Mycの転写能抑制が解除されるばかりでなく,数十倍ものc-Mycの転写活性を示した.このことから,MM-1はc-MycとHDAC転写co-repressorを介在する因子であることが明らかとなった. 次に,MM-1結合タンパク質としてユビキチン分解系のタンパク質であるelongin B,proteasome subuinitsが同定され,c-MycはMM-1導入により分解され,アルギニン変異体はその活性が低下していた.さらに,c-Mycのユビキチン化に必要とされる58番目のスレオニンの変異体,及びMyc boxI欠損c-MycもMM-1により分解され,c-Mycのユビキチン化がMM-1により抑制されることより,MM-1はc-Mycのユビキチン非依存性分解系を活性化している可能性が考えられた. MM-1は癌化のホットスポットであるヒト染色体12q13に位置し,6つのエキソンからなる.スプライシングの違いにより,MM-1α,-β,-γ,-δの4種が存在し,MM-1δはリソゾームに存在したが,他は主として核に局在した.
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