都市大衆社会形成期初期における文化政治と複合的アイデンティティ
Project/Area Number |
12710018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
History of thought
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
林 みどり 明治大学, 政治経済学部, 講師 (70318658)
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Project Period (FY) |
2000 – 2001
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2001)
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Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2001: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2000: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 都市大衆社会 / 文化主義 / 移民 / 言語 / 国民史 / 民俗学 / 文献学 / ラテンアメリカ / グローバリゼーション / ラテンアメリカ(中南米) / 文化政治 / ポピュリズム / 国民文学 / アイデンティティ / セクシュアリティ / 日常言語 |
Research Abstract |
西欧各地からの移民を大規模に受け入れて都市大衆社会が形成されつつあったアルゼンチンの大都市では,1880年代以降,初期グローバル化状況の衝撃にともなう重大なパラダイムシフトが生じた。当該研究が着目したのは,従来の人種主義的なイデオロギーの代替として,<文化>を問題化しかつ<文化>をツールとするといった,それ以前とはまったく異なる文化政治の領域が出現した点である。この文化主義的イデオロギーが最も顕著なかたちで現れたのが,国民言語と国民史の正統性をめぐる領野においてである。 従来の研究では,カリブ地域を除くラテンアメリカ地域における国民言語の正統性に関する諸議論は,独立期の一時期を除けばあまり注目されてこなかった。だが19世紀初頭において植民地的言語状況との言語的連続性を切断するという意味で言語体系内部の論争であったものは,20世紀初頭においては,真正なる文化という文化主義的イデオロギーへと完全にシフトしている点で注目されねばならぬ。この時期,移民言語による出版物の流通や,小規模の移民出版社による海賊版の流布等の物理的流通,都市を舞台とする演劇・文学作品等における移民言語とアルゼンチン方言のクレオール言語化現象が,以前とは比較にならないほどのポピュラリティを獲得するに至った。そのなかであらたな複合的な言語行為主体が登場してきた。しかしそういった都市言語流通空間の出現は,文化的エリート層からは国民的文化の解体現象として問題化され,土着的な形象のうちに国民的なるものの再構築をめざす文化の制度化へと展開していく。国家的プロジェクトとして進行した国民史編纂の過程での<移民問題>の排除や,民俗学研究における言語至上主義はそのひとつである。それらの制度化の動きのなかで文献学的に正統とみなされた<土着的なもの>の記号のみが,後の諸々の文化生産活動への引用可能性を有しはじめるのである。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)