書における近代-その形象経験の特質と記述法に関する研究-
Project/Area Number |
12710022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
美学(含芸術諸学)
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
萱 のり子 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (70314440)
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Project Period (FY) |
2000 – 2001
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2001)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2001: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 近代 / 書 / 形象 / 明治・大正 / 西欧文化受容 / 書法交流 / 美術館建設 / 義務教育制度 / 書法芸術史研究方法論 / 傅申 / 岡倉天心 |
Research Abstract |
本課題は、東アジアで生育し存続してきた書というジャンルが明治以降の西欧的近代の理念をいかなる形で受容したかを、主として観照に関わる観点から考察するための基礎的研究を目的としてきた。美術館における調査・資料整理および作品研究における記述法の検討から得られた成果の概括は以下のとおりである。 1 明治以降の近代的美術制度整備にともない、形象経験において書と絵画の分化が進み、両者の質的相違が顕著となる。 2 ここで成立してくる書における新たな概念には、西欧と中国という二つの異文化受容の相がみられる。それは、翻訳語(「構成(Composition)」「空間(Space)」など)の形成と「筆法」の意味の変容という二重性をおびている。これら二点は、ともに書における「近代」的な形象経験の特質と「作品」概念の成立に関与している。西欧近代の芸術観の受容にともない成立した書「作品」という概念は、その感性的認識のありかたにおいて伝統的芸術観と今日の芸術観をつなぐ鍵になっている。 近代的制度としての美術館に収蔵・展示される書の「作品」は、視覚的側面を観者にアピールする一方で、具体的な形象経験の場においては、作品解説、美術教育というフィルターによって規定される面が大きい。後者における西欧的尺度の妥当性は当該分野においてまだ研究対象となっていない。その問題点は、形象経験の特質を示す用語の検討に根ざすものである。今後は、書における「変容」を捉える際に必要な視点となる同一性と差異性についての指標を検討していくことが課題となっている。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)