Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
本来移動する動物である人間の網膜像には,外界対象の運動や構造に起因する運動成分のみならず,自己運動に起因する運動成分も含まれているが,我々は対象の構造・奥行き,そして自己運動を正しく分解し知覚している。このような処理を構造化して理解するために,特に視覚性自己運動知覚と姿勢制御を中心にし,これらがどの水準で行われているのか,運動それ自体の知覚の処理と比較してどちらが優先的に処理されるのかを明らかにすることを目指した。従来,視覚性身体動揺は,もっぱら一次運動と呼ばれる輝度定義の低次な運動刺激を用いて研究されてきた。そこで,輝度の時間分布としては左右どちらの運動方向成分も有する正弦波状グレーティングの位相反転刺激を被験者に提示し,注意によって追跡することで左右いずれかの運動方向が知覚される高次な運動知覚と身体動揺の関係を調べた。その結果,視覚刺激は物理的に同一であるにも関わらず,注意を左右どちらに向けて追跡するかによって重心動揺の方向が異なり,注意トラッキングによって知覚した運動方向と同方向に姿勢が傾いた。このことから,視覚からの姿勢制御に注意トラッキングによる高次な運動知覚処理が頁献していることが示唆された。さらに,一次運動と注意トラッキング運動を重ねて提示した場合,身体動揺は両方の成分の和を示し,低次と高次の視覚運動が共に同時に貢献していることが示唆された。但し,注意トラッキングの時には,ベクションと呼ばれる自己運動感覚は生じなかった。これらの結果から,視覚性身体動揺が比較的高次の視運動処理からも生じること,またそれは必ずしも自己運動の感覚を必要としないことが示された。したがって,身体動揺,自己運動知覚,運動それ自身の知覚は,単純な階層関係になく,相互入力しあう比較的独立な複数の経路からなる機構によって生じていると思われるが,今後さらに詳細な実験的検討が必要である。
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