Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本年度は三次元多様体のトポロジーに関する情報収集および三次元数論的双曲多様体に関する研究を行った。三次元多様体のトポロジーについては7月にワルシャワで開かれたサマースクールに参加して、三次元多様体の量子不変量について基本的な情報を収集した。国内でも自身の口頭研究発表などを兼ねて京都大学数理解析研究所の研究集会に出席し結び目、量子不変量の情報を収集した。三次元多様体のvirtual betti numberに関するReznikovの論文の中に現れた手法の位置づけを明らかにしていくための準備として役立つものと思われる。三次元数論的双曲多様体については当初の予定通りKudla-Millsonの論文の結果を出発点として研究を進めた。Kudla-Millsonはその論文において一般次元数論的双曲多様体の調和形式を具体的に構成し、それを通してモジュラー(カスプ)形式との関連を論じているが、その結論はカスプ形式のPoincare seriesによる構成に関する古典的制約から、三次元の場合には適用できない。しかし、一方で対応する調和形式は三次元の場合でも問題なく構成されており、この制約はあまり本質的であるように見えない。今年度後半はこの点をどのような手法によって解決できるか模索した。その結果Shimuraによる一連のEisenstein seriesの研究において、同種の古典的制約を克服していることを知り、その内容について研究している。Eisenstein seriesに関する手法がそのままPoincare seriesに適用するわけではない。しかし徐々に両者にはかなり似通った状況があることを理解しつつあり、同種の手法が適用できそうである。