Research Abstract |
電気自動車の普及に対する一番の問題は,一充電走行距離が短いことである。これを伸ばすためには,バッテリの高性能化とシステム全体の効率改善が重要である。効率改善の対象としては,動力伝達系,電動機本体,電力変換装置などがあるが,本研究では,零電圧スイッチング昇圧器付きPWMインバータを用いて永久磁石形同期電動機を駆動することによる電動機+電力変換装置系の効率改善を目的とする。 二年目である本年度は,まず,昨年試作した零電圧スイッチング動作を含まない昇圧チョッパ回路(電流可逆チョッパ回路)とPWMインバータを組み合わせた装置を用いて,いろいろな動作条件に対する特性について,従来から行われている弱め磁束法との比較を行った。これにより,昇圧チョッパ回路とPWMインバータを組み合わせた方式では,従来の弱め磁束法に不向きな電動機に対しても問題なく速度を上げられること,低速領域では従来法よりも効率が下がるものの,基底速度を超える速度領域において最大効率を発生できることなどを明らかにした。 さらに,電流可逆チョッパ部分を零電圧スイッチング化したシステムについてシミュレーションを行い,共振時の動作について検討した。また,シミュレーションにより,リアクトルやコンデンサ等のパラメータ設計を行った。シミュレーション結果より以下のことが明らかになった。(1)チョッパ部のスイッチングによる損失は零電圧スイッチング化することによって改善される。(2)提案の方式は定常的には安定に動作するが,その動作範囲が負荷電流や昇圧比によって制限を受ける。(3)過渡的な応答が,非零電圧スイッチング方式の場合よりも悪くなる。 以上より,提案した零電圧スイッチング昇圧器付きPWMインバータでの永久磁石同期電動機駆動においては,運転範囲の拡大や過渡的な応答の改善が今後の課題といえる。
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