Research Abstract |
1.動学的応用一般均衡モデルによる自動車関連税増徴政策の経済評価 本研究では,昨年度精緻化を進めてきた動学的応用一般均衡モデルを用いて,地球温暖化京都会議(COP3)にて設定された温室効果ガス削減目標を達成するために,自動車交通を対象とした炭素税を挿入した場合の政策水準を明らかとした.それより,現行の税額を含んだ上で,8.5(万円/tCO_2)の炭素税を課せばよいとの結果を得た.これは,燃料価格ベースで見ると,ガソリン価格は現在より4円ほどの値下げ,軽油価格は14円ほどの値上げとなる.なお,このとき市場経済では,約5,000億円の不便益が生じることも同時に示された. 今後は,本研究で設定したパラメータ等の感度分析を行うことにより,ここで示された結果の安定性を検討していく予定である. 2.動学的応用一般均衡モデルによる道路投資と環境保全への最適投資配分の検討 続いて,現在問題となっている道路特定財源制度による道路投資と,1.で検討した自動車交通に起因する環境問題の抑制とを同時に検討することを目的として,動学的応用一般均衡モデルを用いた最適投資配分検討モデルを構築した.特に,ここでは最適制御理論の枠組みを用いており,長期的な視点から,道路資本と環境資本への最適投資配分の検討を行っている.その結果,将来的に道路投資は過大投資の傾向があり,環境問題への配慮を考えた場合,環境資本の水準を更に高める必要のあることが示された.簡単なシミュレーションの結果によれば,道路資本は現在の水準より減少する結果となった一方で,環境資本は現在の2倍ほどの水準が必要であるとの結果となった.また,民間資本も増大している.ただし,これらの結果は,パラメータ等に不安定な部分もあるため,さらに詳細な検討を進める必要がある.
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