Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
建築壁体内部の熱水分同時移動解析に関する理論構成は既に確立されており,実用的な室内熱負荷計算,自然温湿度計算に適用した試みも多く見られるのは周知の通りである。計算上,従来の単純熱伝導ベースに代わって熱水分同時移動を考慮しなければならないのは,美術品収蔵庫や書庫など厳密な湿度コントロールが要求される場合や極端に吸放湿体が多く存在する空間などその対象は自ずと限られてくるだろうが,現況を俯瞰すると,壁体側の計算理論や物性値については比較的整備が進捗しているものの,肝心の室内吸放湿体特性については等閑視されてきたように思える。壁体側を高精度に解析し得たとしても,室内側条件に諾わざる大胆な仮定があれば,全体の精度は到底期待し得ないし,況や内容物そのものの保持が使命の収蔵庫,書庫を考えるなら,一層その特性把握に意を砕いて然るべきだろう。 以上のような背景のもと、本研究では、一般室内に存在する紙類,書庫の書籍を対象に,従来法と比べて高精度にその吸放湿特性を評価し得るモデルを提示した。提案モデルとしては,事務室机上紙類,書庫書籍の存在量および存在状況に関する調査結果を基に,仮想一次元壁体置換法を骨子とする算法を採用したが,これは吸放湿物性値であるκ,ν,λ'の変動を考慮する点が特徴であり,熱伝導方程式における蒸発潜熱の影響を無視する従前の方法と異なる。また,計算上必須である紙類のκ,ν,λ'を実験的に明らかにした。以上から,机1台当たり机上紙類および書架棚1段,1m当たり書籍の吸放湿評価モデルを明示した。 また、室内温湿度の高精度予測が可能となると、そのバックデータとして、空調発停行為のモデル化が必要となる。このような背景から、夏季に家族住戸5戸,単身住戸3戸に対して実測を行い、このデータから、室内グローブ温度に対する冷房開始確率、外気温度に対する冷房運転確率を求めた。これら両データは、空調行為をマルコフ過程と観た場合、冷房off→on、冷房on→offの状態遷移確率に相当するものである。冷房発停に関する状態遷移確率を求めておくことは、発停スケジュールにマルコフモデルを適用する上で必須であるという意味にとどまらず、居住者の在室確率の影響を分離した特性値を得ることで、これと在室スケジュールと重ね合わせて、より詳細かつ正確な冷房運転スケジュールを推定出来得る可能性がある点で有意義である。
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