Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
前年度の研究では、異なる種類の燃料を用いた噴流および噴流拡散火炎に音波を入射した場合に、ある特定のレイノルズ数-ストローハル数領域において噴流の音波入射方向への分岐、噴流拡散火炎の短炎化、音波入射方向への幅拡大が観測されることを示した。このレイノルズ数-ストローハル数領域は燃料の種類によって変化するものの、噴流や噴流拡散火炎の変形現象についてはどの燃料でも生じていることから、この現象は噴流と音波の流体力学的干渉によって生じているものと予測することができた。今年度の研究ではこの結果をふまえ、噴流と噴流に対して垂直方向に入射される音波がどのように干渉して流れ場が変化するのかを数値計算により調べた。円形噴流により形成される自由剪断層は渦輪の列として考えることができる。この渦輪が音波の入射を受ける場合、その位置が噴流軸垂直方向にずれるとすると、それぞれの渦要素がつくりだす誘導速度が自由剪断層を変形させ、噴流の分岐をもたらすものと推測した。そこで、変形の初期段階における流れ場の様子をとらえるために、音波による垂直方向への移動が最も顕著である音波入射方向に平行な噴流断面に着目した。そして、この状況を二次元噴流に音波が入射した場合と同様な状態であると考え、二次元非定常Navier-Stokes方程式を用いて数値計算をおこなった。その結果、実験では噴流の分岐が現れる条件においてもわずかに噴流が蛇行する程度で、大きな変形を起こすような渦の移動や誘導速度の生成は再現されなかった。このことから、噴流の自由剪断層を形成する渦輪列の相対位置の移動だけではなく、渦輪の伸長などによる三次元的な変形が、噴流の分岐現象を支配しているものと考えられる。