Research Abstract |
中期イニシエーション活性検索法を用いて,変異原性肝発がん物質,非変異原性肝発がん物質,発がんプロモーター,変異原性非発がん物質および肝臓を標的としない変異原性発がん物質のイニシエーション活性をラット肝臓の前がん病変であるglutathione S-transferase placental form(GST-P)陽性巣の誘導により評価した。その結果,変異原性発がん物質では,発がん標的臓器に関わらず,有意に高いGST-P陽性巣の誘導を認めた。したがって,中期イニシエーション活性検索法は,臓器標的性に関わらず,変異原性物質の発がん性を,肝臓のみの検索で短期間に評価できることを示した. 第二に,中期イニシエーション活性検索法の特徴の一つである,検索物質の暴露前の肝細胞増殖刺激がイニシエーション成立に与える影響を各種細胞増殖刺激間で比較した。その結果,肝部分切除(PH)処置では,GST-P陽性巣の誘導は,細胞増殖動態との相関性を示したが,代謝活性化は維持されており,GST-P陽性巣の誘導と細胞増殖動態との間には代謝活性化に起因したと考えられる時間差が見られた。一方,CCl_4処置では,肝小葉中心性壊死による代謝活性化の急激な低下後,代謝活性化が回復に転ずる高細胞増殖期後半で,GST-P陽性巣が有意に誘導された。D-galactosamine(D-gal)処置では,誘導された細胞増殖活性は低く,有意なGST-P陽性巣の誘導があったものの,その程度はPHに比較して低値を示した。以上より,細胞増殖および代謝活性化はイニシエーション成立に影響を及ぼす重要な因子であり,代謝活性化を維持しつつ,高い細胞増殖誘導が得られるPH処置は,中期イニシエーション活性検索法において効果的な細胞増殖刺激法であることを明らかにした。 第三に,イニシエーション活性の加算効果を検討するために,PHまたはCCl_4処置を細胞増殖刺激として用い,イニシエーターの少量分割および大量単回投与においてGST-P陽性巣の誘導を比較した。その結果,PH処置の場合,単回大量,少量分割投与とも総投与量が等しければ,同じ効果が得られた。これに対し,CCl_4処置では,総投与量が同じであっても,大量単回投与に比較して少量分割投与の方がイニシエーション活性の検出感度は高かった。さらに異なる種類のイニシエーターの併用投与でも加算性が成立したことから,複合的発がんリスクの評価における有効性も示された。
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