Budget Amount *help |
¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2001: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
1.外科的に摘除された大腸smがん102例を対象とし,パラフィン包埋ブロックから代表切片を薄切した.抗MMP-7,抗β-catenin,抗cytokeratinモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的検討により,がん浸潤先進部のtumor budding, MMP-7タンパクの発現レベルおよびその発現様式を検討した.102例中11例(10.8%)にリンパ節転移を認めた.MMP-7とβ-cateninは主に先進部に発現したが,その発現はむしろ異なって局在した.MMP-7は2種類の発現様式を認めた.先進部がん腺管が高分化から中分化腺がんで腺管構造を維持している場合にはその管腔側に,一方,先進部が脱分化し,tumor buddingが認められた場合には,細胞質・基底側に発現した.後者の発現様式を陽性と判定すると,42例(41.2%)にMMP-7陽性であった.Tumor buddingは64例(62.7%)に,またβ-cateninは69例(69.7%)に陽性であった.このMMP-7の基底側発現とTumor buddingはお互いに強く相関(p<0.0001)するのみならず,両者はリンパ節転移とも統計学的に有意に相関した(MMP-7, p=0.0005;β-catenin, p=0.0006).しかしながら,β-cateninはいずれの臨床病理学的事項とも統計学的に相関を認めなかった.リンパ節転移の危険因子を同定するために,ステップワイズロジスティック回帰分析を施行したところ,脈管浸襲(リンパ管浸襲,p=0.0436,オッズ比2.84;静脈浸襲,p=0.095,オッズ比2.44)と浸潤先進部のMMP-7基底側発現(p=0.0162,オッズ比14.37)が独立したリンパ節転移危険因子であることが同定された. 2.Frizzled/Wntシグナル分子であり,かつ細胞間接着機構の中心的役割を担うE-cadherin/catenin系の細胞膜裏打ちタンパクであるβ-cateninはMMP-7のシグナルの上流に存在するため同分子に着目して,がん浸潤先進部におけるその発現量と細胞内局在に関し,MMP-7発現様式と比較検討した.β-cateninはがん細胞質内に過剰に蓄積し,がん浸潤先進部がん細胞の核内に過剰発現する傾向を認めたが,β-catenin核内発現とMMP-7発現様式には明らかな相関を認めなかった.少数例の検討ではあるが,FAP(家族性大腸腺腫症)に合併したデスモイド腫瘍では,腫瘍細胞の90%にβ-cateninの異常核内蓄積が認められ,かつそれに一致するように大部分の腫瘍細胞細胞質内に過剰発現が認められFAPと散発性大腸がんではがん浸潤・転移に果たすFrizzled/Wntシグナル伝達系の重要性に相違があることが示唆され検討を続けている.
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