Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
肛門括約筋を肛門部に移植する場合に、手術時の括約筋の状態が、最終的な肛門機能にどのような影響を与えうるのかという点に注目して今年度は研究した.成犬を用いた慢性実験にて検討した.括約筋に使用した筋肉は大腿二頭筋であった。最初の手術時に、肛門括約筋を直腸の周囲に巻きつけることで形成した群と、骨格筋の中央に裂け目をつくりその裂け目に直腸を通して括約筋とした群と、後者ではあるが筋肉に緊張を与えなかった群との3群にわけて手術し、新括約筋を形成した.手術は全身麻酔にて行い、一時的なストーマは作らなかった.それぞれ、6頭の成犬を用いて、生理学的に、レントゲン学的に、および、また、検討した.その結果、手術直後の肛門管内圧は、肛門括約筋を巻きつけることで形成した群で、もっとも高かった。しかし、数週間後には、3群との間での差は小さくなり、いずれの群でも統計学的な差を認めなくなった.また、昇圧帯の高さおよび長さも、手術直後では、肛門括約筋を巻きつけることで形成した群で、もっとも良好であった。しかし、数週間後には、3群との間での差は小さくなり、いずれの群でも統計学的な差を認めなくなった.レントゲン検査による検討でも、同様に、初期においては、巻きつけた群の成績が良かった。特に、肛門管の長さに関しては、長期的には、肛門括約筋を巻きつけることで形成した群がもっとも長い肛門管を形成したが、次第に差は小さくなった.組織学的な検討には、筋繊維タイプ分類を用いて検討中である.