Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
平成13年度は、術前にサイトカイン拮抗物質であるステロイドを脳室内に投与し、手術侵襲を加えたラットで、脳内と末梢臓器におけるサイトカイン産生の制御機構の解明し、その結果全身の窒素排泄とカテコールアミン排泄にはどの様に影響するかについて検討した。またステロイド投与における免疫系への影響について検討した。ラットの側脳室へのカテーテル挿入の手術侵襲によるラットの生存率は約95%以上であり、脳室内へカテーテルが確実に挿入できることも確認している。さらに、腹部5cmの正中切開を行った後3時間後24時間後ともに生存率は90%以上で、2つの手術侵襲によるラットの生存率は実験モデルとして安定している。脳室内ステロイドを0.2mg投与とした結果、脳内及び末梢臓器のTNF-αmRNA及びIL-1βmRNAの有意な低下を認めた。また、血中のIL-6濃度も抑制されたが、血中TNF-αは抑制されなかった。また尿中の窒素排泄量と尿中カテコールアミン排泄量の低下を認めた。これらの結果は全身投与と比べて有意差を認めなかった。さらに脳室内投与の免疫系に対する影響を末梢血リンパ球数を用いて調べたところ、全身投与で認められた末梢血リンパ球低下を認めなかった。以上のことから、脳室内ステロイド投与は全身の免疫機能を低下させることなく、脳室内サイトカインを抑制することによって、全身の蛋白異化反応の抑制が可能であると推察された。免疫系の影響を調べるのにかなりの時問が費やされたが、これらの結果から他のサイトカイン拮抗物質を含めた、中枢神経における新しい侵襲反応を制御する戦略について考察され、オピオイド等での制御機構も検討される。