Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
【研究目的】腎細胞癌は転移巣に対し免疫療法が奏功し、稀に自然退縮も認めることから、担癌宿主の免疫応答がその発生、進展に影響を与えていると想定されGM-CSFによる遺伝子治療、腫瘍ワクチン、自己の樹状細胞を用いた癌免疫療法、更には非自己のアロ反応性リンパ球を用いた癌免疫療法など治療法にも選択肢が拡がりつつある。しかし、これらの治療法の作用機序が必ずしも同一でないため、治療成績の向上には担癌宿主の癌細胞に対する免疫応答を治療前に予測し、治療法の選択の基準となるべきマーカーの確立が急務となっている。近年、IL-4受容体alpha鎖の遺伝子多型(Ile50Val)が宿主のTh1/2バランスを決定し、Th2有意の免疫応答が惹起されるIle alleleが、液性免疫(Th2)の亢進がその成因とされるアトピー患者群に多く認められることが報告された。今回、同遺伝子多型と腎細胞癌の発生、予後との関連について解析を行った。【対象と方法】1990年より1999年に京都大学医学部泌尿器科にて治療をおこなった143名の腎細胞癌患者群でPCR-RFLP法による同遺伝子多型解析を行なった。【結果、考察】Th2優位の免疫応答が惹起されるIle alleleが健常者群に比べて患者群で有意に多く認められ(Ile:OR=1.95;p=0.038)、生存率においてもIle/Ile群は、他の患者群に比べて予後不良(p=0.023)であった。Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析においてもHistological Grade(p=0.043)、Distant Metastasis(p=0.0002)と共に、同遺伝子多型(p=0.011)が統計学的に有意な予後規定因子であることから、腎細胞癌患者の発生、病期進展にIL-4受容体alpha鎖の遺伝子多型により規定される抗腫瘍免疫応答が関与し、影響を与えていることが示唆された。