Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
12年度の研究から神経性ショック前後の心拍RR間隔周波数解析パラメーターの特徴は明瞭化できた。しかし、Mem Calc^【○!R】による周波数解析には数時間から短いものでも数10分を要し、モニターとしての有用性に欠けていた。13年度は心拍RR間隔収集装置(メモリー心拍計LRR-03^【○!R】)を購入し、Tarawa/winシステム^【○!R】を用いパーソナルコンピューターと接続し、リアルタイムに解析結果をモニタリングした。本研究の目的・内容を理解し、同意の得られた患者を対象とした。神経性ショック予防モニター実用化のため、周波数解析より得られたパラメーターの有用性を、臨床応用から検討した。全身麻酔覚醒時には非脱分極性筋弛緩薬の拮抗薬として、抗コリンエステラーゼ薬あるエドロホニウム(エド)やネオスチグミン(ネオ)が用いられる。しかし、アセチルコリン受容体の反応には運動神経伝達をつかさどるニコチン作用と、副交感神経(PSN)刺激症状を示すムスカリン作用があるため、一般にPSN遮断薬である硫酸アトロピン(アト)が併用される。自律神経への作用機序が明らかなこれらの薬物を投与した時のRR間隔を周波数解析し、低周波帯域(LF)、高周波帯域(HF)、LF/HFおよびエントロピー(ENT)(理論上最もランダムなものを100%、等間隔なものを0%と規格化)の表す意義・有用性について検討した。その結果、1.アト投与により、HF減少の持続、LF/HF一過性の上昇を認めた。2.エドおよびネオ投与によりすべての症例で心拍数が減少した。心拍数の減少とHFの上昇に明らかな関係はなかった。3.ENTはHFの増加に同調し、アトによって低下したことから、PSN活動を反映することが示唆された。しかし、頻脈時は低値を示し、その解釈には、今後さらなる検討が必要である。これまでの研究から、神経性ショック前は過度の交感神経緊張状態(LF/HFの上昇)が観察され、ショック状態では逆にPNS亢進(HF上昇)(ENT上昇?)することが判明した。つまり、LF/HFを観察すれば神経性ショックの予防は可能ということになる。しかし、RR間隔の周波数解析から得られる数値は個人差が大きく、評価の基準が現在無いのが現状である。今後、ホルター心電図を用いた24時間正常値、負荷試験による変動観察、あるいは術中の変化率など、個人の評価をどのように行なうかの指標が発見されれば神経性ショックを予防するモニターが実用化できると思われる。
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