Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
生体内マグネシウムは、虚血性心疾患や脚卒中だけでなく、高血圧の発症にも密接に関運していることがわかってきた。マグネシウム濃度は腎臓における再吸収機構で調節されるが、その輸送体および調節機構についてはほとんどわかっていない。昨年度までの研究で申請者は、マグネシウム輸送体の調節に一酸化窒素(NO)が関係することを突き止めた。本年度はマグネシウム輸送活性と高血圧との関連を検討するために、高血圧発症モデル動物のDahl salt-sensitive(DS)ratとDahl salt-resistant(DR)ratを用いて以下の知見を得た。高食塩食飼育により、DS ratの尿中マグネシウム排泄量が増加し、血中マグネシウム濃度が低下した。そこで腎近位尿細管細胞を単離し、蛍光色素(mag-fura 2)を用いてマグネシウム輸送活性を測定した。静止状態のマグネシウム濃度は食塩負荷により影響を受けなかった。カリウム保持性利尿薬のアミロライドを加えると、マグネシウム濃度が上昇した。この変化量は食塩負荷したDS ratにおいて他よりも有意に小さかった。NO供与体のNORlで前処理しておくと、食塩負荷したDS ratにおけるアミロライドによるマグネシウム濃度上昇が他群と同程度まで増強された。DS ratでは食塩負荷によりNO産生が低下していると考えられたので、NO合成酵素(NOS)発現量をウエスタンブロット法にて比較した。構成型NOS(eNOS)の発現量がDR ratよりもDS ratにおいて低く、誘導型NOS(iNOS)の発現量が食塩負荷したDS ratにおいて低下していた。以上のことから、DS ratではもともとeNOS発現量が低いためにDR ratに比べてNO濃度が低いが、静止状態のマグネシウム濃度には影響を及ぼしていない。さらにDS ratのiNOSは食塩負荷に感受性で、NO産生がさらに低下していることがわかった。本研究により、高血圧発症と腎臓におけるマグネシウム輸送能の低下が関連していることがわかったが、今後両者がどのように結びついているのか更なる検討が必要である。
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