Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2001: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
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Research Abstract |
大麻成分テトラヒドロカンナビノール(THC)の作用は、連続的に使用したり,あるいは使用時の精神状態や性格などの多くの環境因子によって容易に変容することが知られている.我々はラットを用いてTHCによる攻撃行動が飼育条件によって発現形態が変化し,長期間存続するものとフラッシュバックに類似した現象が認められるものに分類されること,抗うつ薬がこの攻撃行動を抑制することなどを明らかにした.このことから,THCによる攻撃行動は,薬物依存の解明にも重要な手がかりを与えるものと思われる.今回はこの攻撃行動発現時の脳内カンナビノイド(CB_1)受容体のmRNAならびに一酸化窒素(NO)の変化について検討した.まず,環境因子の要因を調べた結果,攻撃性を高めるような飼育条件や種差を用いると扁桃体においてCB_1受容体mRNAの低い発現とNO量の低下を示した.次に,THC(6 mg/kg, i.p.)の投与によってフラッシュバックに類似したマウスへの攻撃行動を示すラットが約30%出現し,その攻撃行動はCB_1受容体拮抗薬のSR141716A(0.01-0.1mg/kg, i.p.)によって抑制された.THC投与時の攻撃行動を示したラツトの扁桃体においてCB_1受容体mRNAの発現は低下していた.さらにマイクロダイアライシスを用いてNO量を測定した結果,THC投与時のマウスへの攻撃行動を示したラットの海馬および扁桃体内NO量は有意に低下し,その低下は扁桃体が著明であった.以上の結果から,THCによる攻撃行動の発現には,扁桃体でのCB_1受容体を介したNO量の低下が関与していることを明らかにした.また,THCを利用することで,ヒトの精神機能の調節機序の解明や,精神障害や神経変性疾患に対する新しい薬物の開発につながるものと期待される.
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