Research Abstract |
本研究の目的は,医療事故を経験する看護婦のメンタルヘルスや疲労度はどのような状況にあるのか,その関連性を明らかにすることである. 昨年度に引き続き,今年度も看護婦のストレス研究に関して多くの業績を有する久留米大学健康・スポーツ科学センターの豊増功次教授,吉田典子助教授の指導,助言を受けながら,本調査を実施した. 本研究では各病院内の重要書類である医療事故報告書を取り扱うため,協力してもらえる施設の確保が難しかった.調査の性質上,対象者の数が当初の計画より少なくなったが,これについては今後の検討課題としたい. 本調査の主な内容は年齢所属病棟等の基本的属性,メンタルヘルス,最近職務上で「ヒヤリ,ハット」した経験の有無並びに回数等である.メンタルヘルスの測定には質問紙を用い,指標としては職業性ストレスの尺度として,信頼性の高い職業性ストレス簡易調査票をおよび精神健康調査票GHQ28項目版を用いた.職業性ストレス簡易調査票では労働負荷量,コントロール度,対人問題,満足度,ソーシャルサポート,心理的および身体的ストレス反応等について測定可能である. 対象は最終的に九州の某大学病院に勤務する新規採用の看護婦88名を対象とした.調査は平成13年6月および9月に実施した.88名の対象者のうち,6月,9月の両調査で主な項目に記入漏れのかなかった82名を分析対象として取り扱った.82名の平均年齢は22.49±1.11であった.「この3ヶ月間に仕事中に「ヒヤリ,ハット」した出来事を体験しましたか?」の質問に対して,「はい」と答えた者は84名(95.5%),「いいえ」と答えた者は4名(4.5%)であった.平均の体験回数は約3回であったが,中には10回と回答している者も含まれていた.「ヒヤリ,ハット」した出来事を数多く体験している者とそうでない者の比較では,GHQ得点において統計学的な有意差が認められ,数多く体験している者の方が,明らかに得点が高く,メンタルヘルスが不良であった.しかしながら,職業性ストレスの項目については有意差は確認できなかった. 今回の調査は実証的な検証をするには,対象者の数が少ないこと,「ヒヤリ,ハット」という医療事故の分野に関する調査であるだけに調査が難しいこと,それに伴って調査の方法論が難しいことなどから,今後の検討しなければならない課題が多い.
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