Research Abstract |
本年度は,仙台市ならびに比較対象として札幌市を具体的な調査地域として,企業グループの子会社の配置と地域経済との関係について考察を行った. 事業所サービスの中でも情報サービス業を対象にして,「企業情報データベース」によって仙台市の当該産業の株式所有関係等をみてみると,仙台市に本社のある情報サービス企業の実に50%以上が子会社(注:ここでは筆頭株主が他企業の会社を意味する)である.しかも域外企業や仙台企業との資本関係を持たない完全な「地元企業」の従業者数・売上高は仙台市の情報サービス業の10%台に過ぎないことを示す資料もある.仙台企業の子会社を含めても,地元企業の従業者数・売上高は半数以下にとどまる.仙台市における情報サービス業の多くが「分工場」であり,こうした「分工場」中心の状況が,他の都市に比べて,仙台市の当該産業の回復が低調であることに結び付いているといえる. 一方,札幌市では「地元企業」の割合も高く,それが情報サービス業の好調さとなっているとはいえる.しかしながら,「地元企業」の規模は子会社のそれに比べて小さく,企業グループの子会社が地域経済の中で占める大きさは等閑視できない. 近年のグローバル化の中で,企業には様々な側面における「グローバル経営」が求められており,そうした中では当該地域(たとえば札幌)での業績や生産性の良さとは関係なく,グループ企業の別地域(たとえば合衆国)での販売不振が当該地域(札幌)の子会社企業に降りかかる,といったことがみられるようになっており,立地企業の資本関係は地域経済との関係の上ではやはり無視できないものなのである.この点は昨年度の研究で詳細にしている. こうした本研究の成果は「仙台市のソフトウェア産業とソフト系子会社の展開」として,経済地理学会北東支部例会において発表した.また現在,これを学会誌へ投稿する準備をしている.
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