Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
小脳の平行繊維-プルキンエ細胞間のシナプスは長期抑圧と呼ばれるシナプス可塑性を示し、この長期抑圧は運動学習の基礎過程の一つと考えられている。これまでの研究により、平行繊維-プルキンエ細胞間のシグナル伝達は主にAMPA型グルタミン酸受容体のGluR2/3サプユニットにより担われていること、長期抑圧にはPKCの活性化が必須であることが知られている。私はGluR2 C末端の880番目のセリンがPKCによってリン酸化されることを明らかにした。また、このリン酸化によりGluR2とGRIPとの結合能が低下することも明らかにした。さらに免疫組織化学的手法を用いてホルボールエステルで処理した培養プルキンエ細胞と未処理の細胞とのGluR2の局在を比較した結果、ポストシナプスにおけるGluR2の免疫反応が有意に低下することを示した。このことからPKCによるGluR2のリン酸化によってポストシナプスにおけるAMPA型グルタミン酸受容体の数が減少することが示された。小脳プルキンエ細胞の長期抑圧は運動学習の素過程として注目され多くの研究がなされてきたが、具体的にどのようなメカニズムによりAMPA受容体の情報伝達効率が低下するのかということについては不明であった。私はGluR2のC末部分がPKCによってリン酸化され、それによりGRIPとの相互作用が阻害されAMPA受容体のスパインにおける数が減少することを明らかにしてきた。これらの結果は小脳長期抑圧を分子レベルで説明できるものである。また、プルキンエ細胞以外の神経細胞においても類似のメカニズムでシナプスの伝達効率が制御されている可能性も考えられ、小脳長期抑圧、および他のシナプス可塑性の理解に貢献したと考えられる。
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