Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 2001: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
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Research Abstract |
サルにおける神経生理学的研究から,上側頭溝および下側頭回前部領域には「顔」に選択的に応答を示す「顔」ニューロンが存在することが示されている.しかし,「顔」に基づいたアイデンティティの認知における上側頭溝および下側頭回前部領域の機能的役割に関する詳細な研究は少ない.われわれは,アイデンティティ認知における上側頭溝および下側頭回前部領域の機能的役割をニューロンレベルで解明するために,「顔」に基づくアイデンティティ認知を要求する遅延見本会わせ課題(以下I-DMS課題と略称する.)を用い,課題遂行中のサルの行動と上側頭溝および下側頭回前部領域の「顔」ニューロン応答を記録・解析した.本年度,われわれは以下の実験結果を得た. 1.上側頭溝前部領域および下側頭回前部領域における「顔」ニューロンの情報量と「顔」空間:I-DMS課題遂行中のサル上側頭溝および下側頭回前部領域における個々の「顔」ニューロン応答に含まれる「顔」の向きおよびアイデンティティの情報量の解析を行った.また,これら「顔」ニューロン集団の応答パターンに対する多次元尺度分析(Multi-dimensional scaling, MDS)を行い,上側頭溝および下側頭回前部領域における「顔」空間を計算した.その結果,上側頭溝前部領域では個々の「顔」ニューロン応答に「顔」の向きの情報量が多く,また,ニューロン集団から計算された「顔」空間には「顔」の向きが明確に表現されていることが示された.一方,下側頭回前部領域では個々の「顔」ニューロン応答に「顔」のアイデンティティに関する情報量が多く,「顔」空間には「顔」のアイデンティティが明確に表現されていることが示された.さらに,上側頭溝前部領域「顔」ニューロンの「顔」の向きの情報量は下側頭溝前部領域「顔」ニューロンの「顔」のアイデンティティの情報量より多いことが示された. 2.行動反応時間と「顔」ニューロン応答潜時の時間的相関の解析:典型例では,I-DMS課題におけるアイデンティティの認知・判断に必要な行動反応時間は,見本刺激と正解テスト刺激間の角度差に比例する傾向が認められた.この結果はヒトにおける同様な認知課題での知見を再現するものである(ValentineとBruce, 1988など).行動反応時間と「顔」ニューロンの応答潜時を比較した結果,下側頭回前部領域の一部の「顔」ニューロンはニューロン応答潜時と行動反応時間との間に有意な正の相関があることが示され,「顔」に基づくアイデンティティの認知・判断と密接に関係すると考えられた.一方,上側頭溝前部領域の「顔」ニューロンの応答潜時と行動反応時間には有意な相関が認められなかった. 以上の結果から,「顔」に基づくアイデンティティの認知に上側頭溝前部領域および下側頭回前部領域の機能的連関が重要であることが示唆された.(De Souza,永福ら,2001).
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