文学における「科学」と「人間性」の交錯に関する研究──探偵小説を視座として──
Project/Area Number |
12J01009
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Japanese literature
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
栗田 卓 立教大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2012 – 2013
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2013: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2012: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 探偵小説 / 江戸川乱歩 / 横溝正史 / 芥川龍之介 / 岡本綺堂 / エドガー・アラン・ポー / 翻訳・翻案 / 科学 / 手塚治虫 |
Research Abstract |
本研究は、大正期以降の探偵小説ジャンルの作品群を分析対象とし、作品に現象する諸要素の社会的・思想的背景の解明を試みるものである。本年度は主に大正期(1920年代)における「探偵小説」の分析を行った。特には「探偵小説」ジャンルの日本における勃興期の海外作品の受容の様相と、それらの具体的なテクスト上への表現の方法に関する研究を重点的に行い、エドガー・アラン・ポーを中心とする先行作品がいかに日本的な「探偵小説」に輸入されていったのかを分析した。その成果の一端として、 1「〈未完〉と「探偵小説――芥川龍之介「未定稿」論」 2「「三つの声」小考」 を発表している。1においては、芥川龍之介における唯一の「探偵小説」と評価されるテクスト「未定稿」の分析を行い、その生成過程におけるE. A. ポーの受容のあり方ととともに、テクストが未完成に終わった理由を同時代の諸状況を作者のレベル、テクストのレベルから論証することが試みられている。2では、岡本綺堂「半七捕物帖」シリーズの一篇「三つの声」を対象とし、テクストにおける「探偵小説」としての構造の特異性を指摘し、また、このテクストをもってシリーズの長期の「中断」へ至る経緯に関して分析を行った。 1、2ともに、E. A. ポーやコナン・ドイル作品らの影響下にあり、それらの先行作品が日本的に受容された時に、どのような変容が起きるのかを検証する際に有用なテクストであることをこれらの成果において提示した。 二年目である本年度は、「探偵小説」ジャンルの生成過程およびその日本的受容に関連する図書の重点的な購入や各資料館における基礎文献資料の収集・調査を計画し、予定通り今年度提出を予定している博士論文を含めた研究遂行の為の発展的作業を行うことが出来た。日本近代文学としての「探偵小説」を成立から捉え直すための必須文献を科学研究費補助金によって重点的に収集することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的であった日本における近代的な「探偵小説」ジャンルの勃興期に関して、ポーやドイルの受容の様相を実証的に分析することに関して、一定の成果を提示できた。また、平行して行っていた戦後「探偵小説」の分析も1960年代の横溝正史の受容を通じ、低迷期の「探偵小説」に関する基礎的な作業も行えている。
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Strategy for Future Research Activity |
大正期以降の「探偵小説」を総合的/通時的に分析する本研究課題において、採択期間を通じて勃興期と戦後の受容に関しては一定の成果を提示できている。今後の課題としては、「探偵小説」の発展から成熟までの期間(1930~1940年代)を視野に研究を展開する予定であるが、この期間は戦中期と重なるため、様々な言論統制との関係で「探偵小説」もまた検閲の対象とされる状況がある。本研究で明らかにしたように、西洋的な起源をもっ「探偵小説」がどのように抑圧され、またその抑圧の回避と大衆への迎合を通じた通俗化を伴う戦略を分析することが今後の課題となる。また、これまでの成果とあわせてこれらの研究結果を博士論文として総合し、学位の取得とともに、書籍として出版し広く研究成果を公表することを目論んでいる。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)