AdS/CFTによる有効場の理論のくりこみ群的解析
Project/Area Number |
12J05519
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理(理論)
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
太田 昌宏 総合研究大学院大学, 高エネルギー加速器科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2012 – 2013
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Project Status |
Declined (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2012: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | AdS/CFT / くりこみ群 / 超弦理論 |
Research Abstract |
本年度は主に、研究の目的に記載した「低エネルギー有効理論の導出」を対象として研究を行った。その結果、査読付き論文一遍を執筆し、日本物理学会で発表を行った。 一般的に、場の理論の作用から紫外領域の自由度を積分して低エネルギー有効作用を導くことは困難である。しかし、AdS/CFTを用いれば、漸近AdSブラックホール時空内の境界の位置を動かすことで、容易にWilson流のくりこみを行える。従来の研究では、高エネルギー極限で共形場理論に対応する漸近AdSブラックホール時空しか扱われてこなかった。これはクオーク・グルーオン・プラズマなどを念頭においた解析であり、音速は有限で体積粘性率がゼロの流体に対応している。一方、AdS/CFTの物性物理への応用も盛んに行われているが、物性物理に現れる場の理論の多くは共形場理論に帰着しない。そこで、Bredbergら(BKLS)はブラックホールのホライズン近傍でリンドラー時空が現れることだけを仮定し、時空の漸近性によらない定式化を行った。これは、非圧縮性流体、つまり、音速は無限大で体積粘性率が現れない流体に対応することが判明した。 しかし、これは一見すると、これまでの漸近AdSブラックホール時空での結果と矛盾するようにみえる。なぜなら、漸近AdSブラックホール時空は、ホライズン近傍の極限でリンドラー時空を含むためである。そこで我々は、Schwazschild-AdS時空で任意のカットオフに対する音速と堆積粘性率を求め、従来のAdS/CFTとBKLSの結果を繋げることに成功した。また、リンドラー時空でもAdS/CFT流の定式化を行ない、従来の観点からの理解を与えた。その結果、漸近AdSブラックホールとBKLSの間の矛盾は、ホライズン近傍極限(つまり対応する場の理論の高エネルギー極限)と流体力学近似(長波長・長周期極限)の非可換性に起因することを突き止めた。これは、AdS/CFTを物性系に応用するにあたり、適正な処方を示唆する重要な成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度研究計画に記載した、前期の計画は概ね達成された。さらに、研究計画調書に記載した平成25年度前期の研究計画を前倒しして実施した。しかし、後期は博士論文の作成に注力したため、平成24年度後期の研究計画に対するまとまった成果は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度後期の計画にある「重力理論の臨界現象」に関して、最近の業界の動向に合わせて研究を推進させる。本年度の研究実施計画にあるように、相転移を起こす重力理論に対してホログラフィックくりこみ群を適用する。特に、最近注目されている非等方なホログラフィック超流動について詳細な解析を行う。AdS/CFTを用いた流体力学の解析では、ずり粘性率とエントロピー密度比のユニバーサリティーが広く確認されていた。しかし、非等方なホログラフィック超流動は、ずり粘性率とエントロピー密度比のユニバーサリティーを破ることが知られている。したがって、AdS/CFTの応用範囲の拡張や有限温度AdS/CFTそのものの有効性の検証にあたり、格好の研究材料である。 具体的には、等方的な流体が持っていたずり粘性率と非等方性から生じた新たな粘性率を分解して、臨界点近傍でのそれらの値の変化を調べる。出来る限り解析的に計算を行う予定であるが、必要に応じて数値計算も視野に入れる。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)