原子・分子の持つ軌道及びスピン自由度に由来するナノサイズ量子伝導現象の探究
Project/Area Number |
12J06024
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(実験)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
家永 紘一郎 九州大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012 – 2013
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2013: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2012: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ナノコンタクト / 近藤効果 / 強磁性転移 / 水素吸蔵効果 |
Research Abstract |
ナノサイズ化された遷移金属におけるd電子軌道由来の量子伝導現象として、今年度の研究成果を記述する。 1. 常磁性金属Pdのナノ化により出現する近藤効果 一般に強磁性と近藤効果は共存しないと考えられているが、強磁性金属(Fe, Co, Ni)の単原子接点において近藤効果が出現するという報告(Nature458, 1150 (2009))がある。さらに申請者は昨年度に、強磁性秩序が回復すると考えられる直径約2nmのNiナノ接点においても、近藤効果を示唆するFano型のゼロバイアス異常、および-1nT依存性が観測されることを報告した(PhysicalReviewB86, 064404 (2012)に公表済み)。このナノ化による近藤効果発現の起源を探るべく、d電子を有するPdと貴金属Au, Ag, Cuのナノ接点において微分伝導度測定を行った。ナノ接点は、純良な金属ワイヤを、低温真空中でノッチからネッキングさせることで作製した(ブレークジャンクション法)。 Pdに関しては、測定を行った単原子接点から直径2nmの接点の全てのサイズ領域において、Niと同様に近藤効果を示唆するゼロバイアス異常が観測された。一方で、貴金属のナノ接点では異常は観測されなかった。バルクPdでは近藤効果は観測されないことに加え、申請者が昨年度に報告したPdナノ接点の接点径30nm以下における強磁性発現を考慮すると、強磁性の発現を起源として近藤効果が生じていると考えられる。この結果は、d電子を有する遷移金属を微小化した場合に、次元性、原子配位等の構造変化によってd電子相関の変調が誘発され、電気・磁気特性が大きく変化することを示唆している。この結果を元に、現在論文執筆準備中である。 2. ナノ接点・ナノ電極への分子液体導入を可能とする低温実験装置の開発 スピン自由度を有するO_2、3He等の分子の電気伝導度特性の研究、及び遷移金属ナノ接点への外部変調効果としての水素吸蔵効果の研究のため、分子液体中でのナノ接点作製を可能とする低温実験装置を自作した。特に本年度は、遷移金属ナノ接点への水素吸蔵効果を探究した。水素吸蔵により以下の効果が期待される。①金属格子の拡張による負の圧力効果。②Pdの有するd電子軌道の閉殻化。そこで、微分伝導度測定を用いて、Pdナノ接点への水素導入による電気伝導特性の変化を探究した。 低温において液体水素を導入すると、微分伝導度スペクトルが時間経過と共に変化する様子が観測された。室温下における吸蔵実験と比較することで、スペクトル変化は金属内に吸蔵された原子状水素の振動励起モードを反映し
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、スピン自由度を有するO2、3He等の分子を架橋した構造を作製し、分子の有するスピン自由度に起因した電気伝導現象の研究を行う予定だった。しかし、研究が予想外の方向へ進展し、低温下における水素原子の量子性の研究へと至った。本実験装置の有用性は充分実証されたので、今後すぐに分子の有するスピン自由度の研究へと移行可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
金属ナノコンタクトに対する電気伝導度・磁気抵抗測定によって電気・強磁特性のサイズ効果を追跡可能となった。この手法をさらに超伝導金属Nb, Pb, V, Snなどのナノ接点に拡張し、ジョセフソン効果の量子サイズ効果、超伝導-単分子-超伝導架橋系の伝導特性、一次元超伝導細線における量子位相すべりなど、多彩な研究へと拡張可能である。現在、ジョセフソン電流の接点サイズ変化測定は達成できており、学会で報告している。これ以上の進展のためには、8Tまでの超伝導マグネットの実装が必要であり、そのための装置の改良を行う必要がある。 また、分子液体導入可能な低温実験装置の完成により、分子の有するスピン自由度に起因した伝導現象の研究へも拡張可能である。現在は、本年度の成果である水素原子の量子性に関する研究をさらに進めている最中である。
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Report
(2 results)
Research Products
(15 results)