Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2013: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2012: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
|
Research Abstract |
本研究は, 量子揺らぎを積極的に用いたアルゴリズムが, 情報処理にどのような影響を及ぶすかを理論的に調べた. 確率的情報処理は, 雑音が乗った情報から原情報を推定する問題に対して, ベイズ推定を用いた確率的定式化によってアプローチするものである. このような問題は, 統計力学を通じて性能評価が行われており, 雑音に対応するパラメータ(温度)を制御することで, 有限温度でピークを持つことが知られている. このときのピークは, 真の雑音強度と同等になったときに達成される. 量子揺らぎは, 系の状態をトンネル効果によって他の状態を遷移させる効果を持ち, 最適化問題など適用するアルゴリズムなどが提案されている. このアルゴリズムは量子アニーリングと呼ばれ, 熱揺らぎ(温度)によってエネルギー障壁を越えながら解探索を行う焼きなまし法にヒントを受けている. 本研究では, このような背景から, 確率的情報処理において熱揺らぎの制御だけではなく, 量子揺らぎを用いることで情報処理性能がどのように変化するのかを, 統計力学を用いて調べた. 平成24年度は, スピングラスモデルで記述できる簡易な情報処理課題である誤り訂正符号に焦点を当て, 解析を行いPhysical Review E誌から出版された. 平成25年度では, 提案した復号プロセスをCDMAマルチユーザー復調に拡張し, 量子揺らぎによる情報処理性能に関して一般的な性質を導いた. CDMAマルチユーザー復調は, ランダム磁場を持つスピングラスモデルとして定式化できる. この問題に関しても, 誤り訂正符号と同様に, 低温領域では量子揺らぎによって性能が向上することが分かった. また, 確率的情報処理における量子揺らぎと熱揺らぎの変換規則についても, 明らかにした. 近年では, 量子揺らぎを制御する量子コンピュータも出来ており, 本研究が与えた理論的な性能評価は, このような分野に発展を促すことも期待できる.
|