Research Abstract |
固体高分子形燃料電池(PEFC)の高性能化,低コスト化のためには,内部で反応物質の輸送を担う電極の性能向上が不可欠であり,電極内で凝縮水が生成されること(フラッディング現象)による物質輸送抵抗の増加が性能低下の大きな要因と考えられている.そのため,具体的に電極内のどの領域で水分が凝縮・滞留することが性能低下を引き起こすのかを明らかにすることにより,物質輸送に基づく電極構造の設計指針を提示することが重要である.そこで本研究では,PEFC電極構造とフラッディング現象の関係について,実験及び数値解析より明らかにすることを目的とした. 触媒層形成プロセスにおいて,塗布厚さと白金担持カーボン・非担持カーボン混合比を形成パラメーターとすることにより,触媒層厚さ及び白金担持量をそれぞれ独立した構造パラメーターとして触媒層を作製し,性能評価を行った.これより,触媒層薄膜化により抵抗過電圧が低減される一方,低白金化によっては抵抗過電圧及び濃度過電圧が増加することが示された.性能解析より,これらの過電圧増加による性能低下は触媒層内における局所の物質輸送フラックスの増加及び白金周囲における局所フラッディングの影響であると考えられる. 以上の電極内の抵抗因子に加えて,軟X線を用いた水分可視化計測より電極の多孔質積層構造の層間に液水が滞留することが示唆されており,更なる酸素輸送の抵抗因子となることが予想されることから,層間の構造解析を行いモデル化し,格子ボルツマン法(LBM)を用いた物質輸送解析を行った.これより,層間にクラック(隙間)が生じており,ここに液水がフィルム状に滞留することにより,ガス輸送が著しく阻害されることが明らかになった. これらの電極内及び電極層間における物質輸送抵抗因子の抽出・評価は,最適な電極構造設計に向けて重要な知見であると考えらえる.
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