Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
発光クラゲの生体内では、タンパク質-酸素-発光基質複合体により生成された励起エネルギーを緑色蛍光タンパク質に移動させ緑色発光を行なう。この際には、タンパク質-酸素-発光基質複合体より高効率的に一重項励起分子が生成され、効率的にエネルギー移動が行なわれている。この発光機構は、分析技術の開発を指向した人工発光システムの構築に応用できる。また、エネルギー移動効率とこのコンプレックス分子の存在状態との関係は明確でない。本研究では、エネルギー移動を用いた発光色の人為調節および短寿命分子によるエネルギー移動と分子状態との関係を解明するために、人工発光システムを構築し、その発光に関して検討した。発光タンパク質の発光における発光基質はタンパク質が無い状態での水溶液中では発光を示さない。これは、一重項励起効率および蛍光効率が極めて低いためである。そこで、環状糖鎖シクロデキストリンの3位に発光クラゲの発光基質同族体を結合させ、励起効率を向上されるとともに、これらの向上効果を低減させないように他のエネルギー受容分子である蛍光分子にエネルギー移動を起こさせる複合分子を設計し化学合成した。その結果、励起分子と蛍光分子の結合位置が発光効率に大きく影響を及ぼすことが判明し、これまでに、環状糖鎖を用いず直接励起分子と蛍光分子とを結合させた場合よりも25倍の発光効率を有する発光分子-環状糖分子-蛍光分子複合体の創製に成功した。さらに本化合物は、発光環境に影響されにくいものであり、今後、学術および産業において大いに貢献できるとものと示唆された。また、励起一重項分子とエネルギー受容分子との距離が長くなるように設計された励起分子-環状糖分子-蛍光分子複合体では、エネルギー移動はほとんど起こらず、約10Åの距離の差が、エネルギー移動効率に大きな影響を及ぽしていることが示された。
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