Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
メタラサイクルは多様な反応性を持つ有用な中間体である。本研究では、シクロブタノンの2位あるいは3位に各種の官能基を導入した基質を用い、それらの分子内官能基に対するローダサイクルの反応性について検討してきた。今年度はさらに、最も基本的な複素芳香環化合物であるピリジンのアルケニル化反応について新しく検討した。ピリジン環を含む有用生理活性物質が数多く知られているが、ピリジン環に側鎖を導入する方法のほとんどは、ハロゲン化ピリジンを利用したものである。筆者らはルテニウム錯体を用いてピリジンを直接的にしかも位置及び立体選択的にアルケニル化する反応を開発した。すなわち、カチオン性ルテニウムービニリデン錯体を過剰量のピリジンと125℃で24時間加熱すると(E)-2-アルケニルピリジンが得られた。反応機構の詳細は明らかではないが、[2+2]付加過程を含むものを推定している。まず、ルテニウムービニリデン錯体のルテニウム-炭素二重結合とピリジンの窒素-炭素二重結合の間で[2+2]付加が起こり、4員環メタラサイクルができる。水素引き抜きによりアザアリル錯体となり、最後にプロトン化によってアルケニルピリジンが生成したと考えることができる。カチオン性ルテニウムービニリデン錯体は前駆体ルテニウム錯体と末端アルキンあるいは1-シリルアルキンから生成することが知られている。そこで、上記の結果に基づき触媒反応化を試みた。その結果、1-シリルアルキンと20mol%のルテニウム錯体を用いて、(E)-2-アルケニルピリジンを立体選択的に収率よく合成することができた。この反応は、ピリジンに直接的にしかも位置及び立体選択的に炭素-炭素結合を導入している点で合成的に有用である。
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