Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
膜蛋白質の結晶化は、界面活性剤で膜から可溶化した後、水溶性を保つために界面活性剤共存下にある試料(膜蛋白質・界面活性剤複合体)を使って行う場合が多い。そして、結晶化に成功するためには共存する界面活性剤の種類も重要なファクターである。本研究では、膜結合性コハク酸ユビキノン酸化還元酵素の結晶化実験から、共存する界面活性剤と結晶化の正否の関係を見い出した。すなわち、膜蛋白質水溶液に硫酸アンモニウムやポリエチレングリコール等の沈澱剤を加え、膜蛋白質の溶解度を減少させることで結晶化を行う場合、共存する界面活性剤のミセル間の相互作用が結晶化に重要な働きをするということである。沈澱剤を加えると膜蛋白質の溶解度が減少すると同時に、ミセル間の相互作用もだんだんと大きくなり、遂には界面活性剤が相分離する。相分離を起こしてしまっては、膜蛋白質が変性してしまう。しかし、目的膜蛋白質が結晶化するのに必要な沈澱剤濃度下で、界面活性剤が相分離する直前になっていると、膜蛋白質・界面活性剤複合体分子間に大きな相互作用が働き、結晶化が促進される。この知見をもとに、膜結合性コハク酸ユビキノン酸化還元酵素の結晶化に適した界面活性剤を予測し、結晶化実験を行ったところ、いくつかの種類の結晶を得ることができた。得られた結晶は、7から3.5Å程度の分解能を示した。また、回虫ミトコンドリア中のフマル酸還元酵素の結晶化にも適用したところ、結晶を得ることに成功した。この結晶は現在のところ5μm以下程度大きさしかないが、方向によっては4.0Å程度の分解能を示している。結晶化条件を最適化することで、数百ミクロンの大きさに成長させることができえば、X線結晶解析が可能になると考えられる。
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