Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
シロイヌナズナの突然変異体を用いた遺伝学的解析から、植物の形態形成や環境応答など様々な局面において、受容体型プロテインキナーゼの関与が明らかになりつつある。病原菌認識、応答機構では、細菌ベン毛の構成タンパク質であるフラジェリンを、ロイシンリピートをもつ受容体型プロテインキナーゼFLS2が認識する系が知られている。本研究では、シロイヌナズナの形質転換によりフラジェリンのエピトープを植物自身に誘導的に発現させて、これが自身の病原抵抗反応を誘発するか、その効果を調べるとともに、耐病性向上という視点から、受容体型キナーゼを介した信号伝達の人為的操作を可能にする系の確立を目指した。エリシターとして機能することが示されている大腸菌のフラジェリンN末端22アミノ酸のエピトープを、細胞壁タンパク質PDF1の分泌シグナルペプチドに融合させ、熱ショックプロモーターのもとで発現するように構築したT-DNAをシロイヌナズナに導入し、形質転換植物を作出した。その結果、熱ショックによって導入した融合遺伝子が誘導的に発現するとともに、PR1aタンパク質をコードする遺伝子の発現誘導が認められた。同じ処理条件で野生型植物には誘導が認められないことから、フラジェリンの発現によって引き起こされた応答反応であると示唆された。一方、菌の感染や外からのフラジェリン処理で認められる生長阻害など、形態的な変化はみられなかった。他の抵抗性関連遺伝子の発現が同時に誘導されているか、実際に抵抗性が高まっているかについては、さらに解析中である。