Research Abstract |
成人型早老症として知られるWerner症候群は,骨軟部腫瘍,甲状腺癌,メラノーマなどの比較的まれな腫瘍が多発することも判明し,老化とがんの関係を解明する上で興味あるモデルである.本症はこれまで,世界中で約1,100例の報告があるが,そのうち900例近くが日本人であり,韓国・中国では全く報告がない. 本調査では,韓国・中国でWerner症候群の第1例を発見すること,および国民一般集団でのWerner症候群原因遺伝子(WRN)のヘテロでの変異頻度を調査することを目的とする.昨年度は,ソウルの一般集団1,000人の血液を用いて,日本人で最も多い変異(mut4,頻度は6/1,000)を含め,頻度の高い3種類の変異(mut1,4,6)の有無を検索したところ,いずれも全く見られなかった. 本年度,在日韓国人3世にWerner症候群の同胞例2例を確認した.臨床的にはほぼ典型的な症例で,Western法によりWRN蛋白の無発現を確認した.現在,遺伝子型を検索している. WRNのヘテロでの意味を検索する一環として,わが国の一般集団における甲状腺癌,骨軟部腫瘍,メラノーマ患者でのmut4の頻度を検索したところ各々,1/158,1/119,0/130であり,一般集団での頻度と同じであった.WRNの変異は一般の癌には関係していないようである. 基礎研究として,Werner症候群患者由来細胞の細胞分裂に伴うテロメア短縮,Werner症候群とミトコンドリア変異の関連,Werner症候群皮膚組織におけるコラーゲンの産生と架橋形成の検討などを行なった.
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