Research Abstract |
本年度は,ソフトウェア要求獲得方法論の一つであるゴール指向分析法をもとに、この方法論で作られる生成物から最終成果物である要求仕様書の品質を推定する手法を開発し,評価実験を行った.具体的な研究成果を以下に示す. 1.ゴール指向分析法の拡張:トップダウンの要求獲得法の一つであるゴール指向要求分析法のAND-ORグラフに属性値を付加することによって拡張を行った.グラフのノードで表されるゴールには,stakeholderごとの優先度(preference)を,ゴール間の分解・詳細化関係を表す枝にはそのサブゴールが親ゴールの達成にどれだけ貢献するかの度合い,つまり貢献度(contribution)を付加する.これらの値をもとに,ゴールの選択,コンフリクトを起こしているゴールの検出,ゴールに変更があった際の属性値を用いた影響解析が行える.また,ゴールの詳細化や属性値をふる際の,stakeholderから情報収集するためのインタビュー支援方式も併せて考案した. 2.ゴール指向分析法に基づく要求仕様書の品質計測の手法の開発:ゴール指向分析法などの獲得技法や他の方法論は,プロダクト作成作業のみの支援で,プロダクトの品質を測定したり,測定結果を元に品質を改善したりする作業を支援していない.本研究では,AND-ORグラフに付加した属性値やグラフの構造的な特徴より計算される品質メトリックスを考案し,それらの値の加重平均を求めることによって,IEEEで標準化されている要求仕様書の要求仕様書の妥当性,非曖昧性,完全性などの品質特性を予測する手法の開発を行った.実際に列車の座席予約システムのゴール指向分析法に基づく要求獲得過程に適用し,本手法の評価を行った.この手法は,直接測定が容易に行える要求獲得方法論用の品質因子を用意し,それらの値をもとに,予想される要求仕様の品質メトリックスを計算する手法であるため,方法論ごとに品質メトリックスと品質特性計算用の重み行列を定義することにより,種々の要求分析過程に適用できることを確認した.
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