Research Abstract |
政治参加の観点からの既往の民主主義に関する大きな理論的分類として,いわゆるエリート民主主義論,および民衆の政治参加の増大が望ましいとする参加民主主義論がある.それらは民主主義にかかわる哲学的な対立であり,従来より民主政治制度はそれらのバランスをいかにとるかという問題に常にさらされていたといえよう.その中でIT技術の進展による政治参加に対する希求が強まっていく状況では,ネットワークを利用した政治制度をいかに穏健に,大衆迎合を防ぎつつ政治制度に導入していくかという具体的方法論の検討が求められている. 現実の議会では、代表質問などの討議プロセスと表決段階が対面型のコミュニケーションによって構成されている。しかし、インターネット上での多数の市民による討議にあたってはその設計の自由度は高く、表決段階との連結性を以下に担保するかということが問題になる。また,インターネットコミュニケーションでしばしば観察されるフレーミングを防ぐための議論のコントロール・管理手法の検討,および議論に不慣れな市民でも容易に参加できるような議論構造化手法の導入を検討することも肝要である.Ortwin Renn(1993)によれば,集団での意思決定過程はアジェンダ設定,討議,選択肢決定,投票の4つの段階からなるという.また,建設的な議論では問題状況の認識と代替案の提案とが交互に行われるプロセスであると考えると,代替案のない問題状況の認識批判を非建設的な議論として定義できるのではないかと考え,今年度の成果として,それらのプロセスモデルの記述を行った.来年度以降それらのモデルに基づく電子掲示板システムを構築する予定である.
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