Research Abstract |
fractalkineは活性化血管内皮細胞上に発現する膜型ケモカインである.我々はfractalkine receptor(CX3CR1)を世界に先駆けて同定し,CD14+単球,CD16+NK細胞,CD8+T細胞上に発現していること,およびfractalkineが従来のケモカインと異なり接着分子として作用することを報告した(Imai, Cell 91:521-530,1997).今年度は,LPS投与によるマウス敗血症モデルにおける抗fractalkineによる予防効果を検討するために,単球やNK細胞と血管内皮細胞との接着や内皮傷害におけるfractalkineの関与を検討した.1)可溶型fractalkineは単球のfibonectinやICAM-1に対する接着をも増強した.2)ECV細胞株にfractalkine遺伝子を導入したtransfectantを作成し,単球やNK細胞との接着を検討したところ,細胞膜上に発現したfractalkineが有意に細胞接着を増強することを認めた.さらに,fractalkineのNK細胞活性化効果を検討したところ,3)fractalkineは濃度依存性にNK細胞の抗腫瘍細胞殺傷能を増強した.4)この作用増強は,NK細胞からの頼粒放出増強によることが明らかとなった.5)実際に,fractalkine発現ECV細胞やヒト胎児血管内皮細胞を標的細胞とした実験系により,NK細胞がfractalkine発現血管内皮細胞を著明に傷害することを見いだした.この結果は,敗血症時に産生されるサイトカインにより,活性化した血管内皮細胞がfractalkineを発現し,単球やNK細胞の接着を誘導し,自身が傷害されていることを強く示唆するものと考えられた.
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