Research Abstract |
本研究の目的は,中学生の心理的ストレス耐性を高めることを目的として,中学校現場で実施可能なストレスマネジメントプログラムを考案し,その実施と効果の検証を行うことであった.今年度は主に以下の成果をあげた. 1,ストレスマネジメントプログラムを考案し,50分×9時間分の授業指導案とワークシート等の教材を作成した.具体的な構成は,(1)導入,(2)心と身体の関連性の理解:筋弛緩法の習得,(3)ストレス状態の理解:ストレス反応,(4)ストレス源(ストレスを感じる出来事)の理解:ストレッサー,(5)ストレスを感じさせる考え方の理解:認知的評価,(6)ストレスへの対処方法の理解(1):対処方法の存在と種類,(7)ストレスへの対処方法の理解(2):対処方法の効果・選択(1),(8)ストレスへの対処方法の理解(2):対処方法の効果・選択(2),(9)まとめ:ストレスマネジメントの実践である.その際,中学校教諭数名,および心理的ストレスを専門研究領域とする研究者2名の意見に基づき,修正が複数回行われた, 2.作成されたプログラムに基づいて,9時間授業1校(2年生:総合的な学習の時間),2時間授業3校(1,2,3年生:総合的な学習の時間,保健体育,道徳)でストレスマネジメントが実施された.授業後のアンケート調査から,生徒たちは授業内容に非常に関心を持ち,自己の心理的ストレスや心の健康について考える良い機会となったこと,3年生の中には高校受験期に積極的に筋弛緩法を行うなど授業内容が日常のストレスマネジメントに活かされていることが報告された. 我が国では,学校場面における系統的なストレスマネジメントプログラムの開発段階である.したがって,指導案や教材を含めた本プログラムの考案は,今後のストレスマネジメントの実践を促進するものとなろう.今後の課題は,統計的な効果の検証を行いながら,より効果的なプログラムへと改訂していくことである.
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