Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
アメリカ白人の中流階級女性を対象にした大衆雑誌Ladies' Home Journalのディスコースをとおして、1930年代までの女性文化を継続して考察した。多層なディスコースの中から、今年度は女性文化の中の「家庭」の役割を中心に考察した。消費社会が女性を有力な顧客として発展していく中で、家庭や家事に関する記事や広告は、「家庭の天使」としての女性のジェンダーロールを強固にすることに関与した。Catharine Beecherは1869年に「アメリカン・ウーマンズ・ホーム」を設計し、家事空間に女性を取り込むような魅力的な家事空間を提唱した。こうした提案に便乗し、女性大衆雑誌は言説や関連広告などで魅力的な家庭をつくるためのさまざまな手段や考えを提供している。その一方で、同誌は大衆雑誌の中で唯一協同家事を提唱し、新らしい女性と家庭の関係を読者に紹介している。こうした女性と家庭との関係の変化に関わるイデオロギーと、同誌に収録されている他のディスコースの関係を考察した。また、大衆女性雑誌の家庭観を深めるため、アメリカ婦人参政権協会(AWSA)の公的機関雑誌であり、女性作家たちも寄稿しているThe Womans' Journalの比較をすすめた。女性の日常生活における家庭や家事との関係をみることは、ジェンダーロールが揺らぐ時期の女性の空間の構築過程を知るために有効であることが認識できた。