Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
報告者は、一九世紀フランスにおける支配階層の実態とイメージを把握するために、とくに「政治空間に対する商工業者の参入」に着目して分析をおこなうことを意図した。その際、地方都市レンヌにおける市議会を研究対象とし、市議会議員における商工業者のウェイト、市議会の議論における商工業者の利害の取り扱い、市予算における商工業関連予算の比率の変化、この三点に着目した。第一の点については、重点的に検討した昨年度の作業を受け、主要な対象であるレンヌ市議会議員について、議員の職業や身分をかかわるデータベースの作成を進めた。また、第二および第三の点については、一次資料にもとづく分析が必要となるため、2002年9月にフランスにて資料の収集をおこなった。具体的には、レンヌ市文書館にて市議会議事録および市予決算報告を閲覧し、情報を収集した。また、レンヌ市が位置するイル・エ・ヴィレヌ県の県文書館にて関連する資料を収集した。さらに、同市および同県と比較することによって事態を相対化するべく、同県が位置するフランス西部ブルターニュ地方を構成する他の四県(フィニステール、コート・ダルモール、モルビアン、ロワール・アトランティック)の県文書館でも補足的な資料収集をおこなった。帰国後は、収集した資料の分析を進め、レンヌ市における支配階層の実態とイメージを浮き彫りにするとともに、それを他県の支配階層のものと比較する作業を進めている。