Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
偏微分方程式論の関数解析的研究の立場から、特にKdV方程式や非線形シュレディンガー方程式などの非線形分散型波動方程式の数学解析を行った。分散型方程式において、解の特異性がどのように非線形相互作用するかを調べることは重要な研究である。その研究成果の一端として最近、非線形分散型波動方程式について、十分な滑らかさを伴わない初期値でも解の存在定理やその解の性質を調べることが行われ、その研究の概観作りがなされつつある。その中で本年度の研究は、周期境界値条件における修正KdV方程式と空間3次元の非線形シュレディンガー方程式に対して、方程式の初期値問題の適切性が数学的にどのように実現され得るかに着目し非線形問題の理解を目指した。周期境界値条件における修正KdV方程式に対して、初期値に対応する特解の周りで解の摂動問題を考え、これまでに捉えきれなかった解の存在定理を証明した。この証明法は方程式の幾何学的対称性を用いて方程式の性質を調べることとも密接な関係があり、他の方程式の同様な問題に対する適用範囲の拡大が期待される。空間3次元の非線形シュレディンガー方程式に対しては、既知とされる時間局所解の研究を出発点とし、解の延長問題とその大域的挙動の問題が検討された。解の接続問題を扱うところではこれまでに確立したエネルギー輸送という方法論の適用を行ったが、更にここでは新しいタイプのエネルギー減衰評価式を提出し、この2つの議論の融合から波の散乱現象の実現を成功させ、時刻無限大で解は自由解に近づくことを証明した。これらの研究成果については論文として現在執筆中である。最後に、今年度の研究課題を遂行するにあたって、昨年度と同様に国内外への研究調査費、図書費、文具費ならび謝金として研究補助金が有効に使用されたことを報告する。
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