Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2002: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
本研究では,ヒトで行動特性との関連が報告された脳内物質関連遺伝子多型をイヌで解析し,イヌの行動特性の遺伝的背景を探ることを目的としている。本年度は,昨年報告したドーパミン受容体D4(DRD4)遺伝子のエキソン3領域に加え,新たに多型が見出されたエキソン1,イントロン2領域を,有用犬候補のラプラドールレトリーバー(麻薬探知犬86頭,盲導犬86頭)で解析した。訓練の合否,および麻薬探知犬は7項目,盲導犬は15項目の行動特性の5段階評価値と,遺伝子型との関連性を解析した。 麻薬探知犬は,「集中力」,「ダミー(タオルに麻薬臭をつけた訓練具)欲」,「活発性」が高い個体が有意に合格しやすい傾向にあった。エキソン3の短い対立遺伝子435を持つ個体は「他犬への攻撃性」と「人懐こさ」が強く,エキソン1の長い対立遺伝子L,またはイントロン2の短い対立遺伝子Pを持つ個体は「服従性」が弱い傾向にあったが,訓練年度により,結果に違いがあった。合否と遺伝子型の関連は見いだされなかった。 盲導犬は,行動特性評価のうち,「興奮性」が低く,「集中力」が高い個体は合格しやすい傾向にあった。エキソン3の長い対立遺伝子447aを持つ個体は「食物に対する過度の執着」が弱かった。エキソン1の短い対立遺伝子3を持つ個体は,他犬,動物,食物,臭いに対する「過度の執着」,「興奮性」が低く,「服従性」が高く,盲導犬としての適性を多く備えていた。イントロン2の長い対立遺伝子Qを持つ個体は,エキソン1と関連が見られた行動特性に加え,「攻撃性」が低く,「集中力」が高く,盲導犬としての適性を多く備えていた。合格個体や繁殖個体は不合格個体と比較してエキソン1の対立遺伝子Sまたはイントロン2の対立遺伝子Qを高頻度に持っていたが,有意差を検出するには至らなかった。 以上から,同一犬種内で,遺伝子型が行動特性の個体差に影響している可能性が示唆された。DRD4受容体遺伝子の3箇所の多型はそれぞれ異なる行動傾向に影響を与えていた。特にエキソン1の対立遺伝子S,イントロン2の対立遺伝子Qを持つと,「過度の執着」が弱いなど,多数の行動特性において高得点を示したことから,これらの対立遺伝子を指標として適性個体を選別できる可能性が示唆された。
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