Research Abstract |
地下熱利用システムにおける地中熱交換器のコスト面の改善をめざして,建築物の摩擦杭を空調用熱交換器として利用するエネルギーパイル方式を実際の建物に適用するとともに,理論および数値解析によるシステム特性の解析を行い以下の知見が得られた. (1)摩擦杭を空調用熱交換器として利用するエネルギーパイルシステムを2002年12月に竣工した札幌市内の事務所併用住宅に適用した.暖房期間のヒートポンプの成績係数は3.9と非常に高い値が得られた.また,従来方式に対する暖房期間一次エネルギー削減率は23.2%となった. (2)垂直型地中熱交換器の任意の多数管配列に対して,比較的迅速な計算が可能な線源理論による解析プログラムを開発した.長期的に地下熱利用を行った場合においても,ヒートポンプ暖房,地下熱直接利用型冷房の熱源として十分利用可能であることを示した. (3)地下熱直接利用型冷房のエネルギー使用効率の実測値は18.6と極めて高効率であった.また,ヒートポンプ利用時には,地盤が凝縮器のヒートシンクとしても有効であることが判った. (4)寒冷地域、準寒冷地域温暖地域の代表都市として,札幌,仙台,東京を取り上げ,運用時の一次エネルギー,二酸化炭素排出量の削減効果の解析を行った結果,いずれの地域においても従来方式に対して40〜80%の削減率を達成し得ることを明らかにした.ペイバックタイムは数年程度である. (5)北海道における業務用建物を対象として地盤熱源ヒートポンプシステムの導入効果の解析を行った.今回の計算条件では,北海道の潜在市場規模における年間一次エネルギー削減量,二酸化炭素削減量は,それぞれ1100TJ,2.5万t-Cとなった. (6)北海道大学構内に地下熱を利用した雪処理・空調複合システムを建設し,実規模実験を行った.路面融雪の実験では地盤からの熱媒返り温度の期間平均値は8.7℃であり,安定した推移を示した.また,夏期の冷房・除湿効果が高いことを明らかにした. (7)2001年12月に札幌市内に建設された事務所における自然エネルギー活用型敷地内雪処理・空調複合システムの実測と評価を行った.地下熱利用システムの一次エネルギー消費量は従来方式の1割未満であり,省エネルギー効果が極めて高いことを示した.また,路盤構造の改善により多雪・厳冬期においても有効なシステムと成り得ることを明らかにした.
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