| Research Abstract |
用排水システムのシステム論的取り扱いにおいては,決定論的手法と確率論的手法がある.前者の手法による渇水時の用水システム管理を考察するため,変分法の枠組みにおける最適制御問題を設定し,最小原理を導出した.この最小原理は時間領域における2点境界値問題の形をとってはいるが,流出特性や水需要が決定論的に予測可能な場合,あるいは,随伴方程式系の初期条件を与件パラメータとして設定する場合には,時間的順方向に逐次最適解を決定していくことが可能である.したがって,用排水システムの実時間自動制御に対する直接的適用を行うことができる.その結果,複数のため池を有する水田用水システムにおいては単一臨界時刻での給水制限の開始,また,ため池からの蒸発を考慮した畑地間断かんがいのパターンが,最適解として実現されることを数値シミュレーションによって確認した.一方,後者の手法を排水システムの評価問題に適用するため,ため池,山林,水田,畑地,用水路,排水路などの構成要素からなる用排水システムに対し,構成要素の動的特性を降水や流出流量の実測データ,地形図や実測から得られた地形,構造データを用いて周波数領域において同定した.そして,それらが洪水流出へどのように寄与しているかを周波数領域において明らかにした.これに基づいた,洪水時における水理構造物のフィードバックシステム設計については,研究を継続中である.また,湖沼のような貯留系を中心とした用排水システムに対して,ロバスト制御の枠組みを用いた保存性汚濁働質の自動制御,管理最適化モデルを構築し,水質管理のフィードバック問題における極めて普遍的な概念的アプローチを提示した.
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