Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ネズミ糞線虫感染型幼虫4000隻を昨年度同様C57BL/6マウス(♂、8週令)に感染させその後のマウスの行動変容を観察した。昨年度Open field testにて感染マウス群においてラインクロスの回数の低下傾向をみたがコントロール群との有意差がなかったことを考慮し測定法を変更した。同じ群内のマウスを同時に自動的に計測できるアンビュロメーターを用いた。アンビュロメーターによる計測を用いても感染マウス群とコントロール群の間に有意な自発行動の低下は認められなかった。以前の実験より何らかの免疫低下のあるマウス(好中球ブロックマウスなど)では感染型幼虫は多数頭蓋内に移行しその時点でマウスの自発行動の低下が観察されたので、多数の糞線虫(5000〜6000)を感染させOpen field testにて自発行動の変化特にラインクロスを観察した。この系では感染群に有意な自発行動の低下が認められたが感染群のマウスは感染4日までにすべて死亡した。感染マウスでは脳内に点状出血が多数みられ組織標本では嗅球の構造の乱れが認められたことよりネズミ糞線虫の侵襲による機械的な脳のダメージが原因と考えられた。次に協調運動障害のテストであるRotor rodでは昨年度感染マウス群にて落下までの時間の有意な延長が認められたことを受け次の可能性について検証した。昨年度は実験をマウスの活動時間帯のはじめである夕方に行ったためネズミ糞線虫の脳内への侵襲により睡眠覚醒のリズムが感染マウス群にて変化したため落下までの時間が延長した可能性を除外できなかった。今回完全にマウスが覚醒している深夜帯にて同様の実験を行った。この系でも落下までの時間の延長は縮小したもののやはり感染群にて落下までの時間の延長傾向が認められた。宿主脳内への細胞浸潤はこの時期まだほとんどみられないことと考えあわせるとネズミ糞線虫の産生する物質により引き起こされたと考えられた。現在頭蓋内に移行したネズミ糞線虫感染型幼虫を回収し感染前と比較し産生物質を同定する試みを開始している。