Research Abstract |
本研究では死亡の直前に頸椎骨折を生じた症例および骨傷がない頸髄損傷が疑われる症例において頸髄組織中のcalpainを免疫組織学的に検索し,頸髄の主な損傷高位を診断するための指標としての有用性について検討している.予備実験は平成12年度中に行っており,市販の抗calpain抗体と抗neurofilament抗体が本研究に妥当であることを確認した.その成果は,平成13年4月に行われた第85次法医学会総会にて報告済みである. 平成13〜14年度中は引き続き本研究に適切な症例から頸髄を採取して検討した.当講座での解剖例から採取された頸髄を10%等張ホルマリン固定・パラフィン包埋して組織切片を切削した.頸椎損傷例では,骨折の部位および損傷の型を分類し,骨折部位と頸髄の損傷部位との対応関係を確認している.また,サンプリングした頸髄は,各髄節ごとにわけて切片を作成している.こうして得られた切片に対し,HE染色およびKB染色を行うとともに,抗calpain抗体と抗neurofirament抗体を一次抗体とした免疫染色を行った. これまでのところ,頸髄に明らかな挫滅が見られ,受傷後瞬間的に死亡したと考えられる事例では,ミエリンを中心にcalpainの陽性部が増加していた.挫滅や明らかな脊髄内出血がみられない例では軸索の膨化がみられる部位にほぼ一致してcalpainの陽性部位が分布しており,とくに受傷から死亡まで十数時間経過したと考えられた事例では,著しく膨化した軸索の内部にcalpain陽性部が認められ,その部分は抗neurofilament抗体による免疫組織染色では陰性であった. 今後は引き続きデータを蓄積するとともに,ミクロダリアの活性化の程度との相関を検討する予定である.
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