Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
近年の画像診断の発達、普及に伴い、早期腎癌の診断が可能になってきましたが、現時点では臨床上腎癌に特異的な血中腫瘍マーカーはなく、その診断は画像診断に頼っているのが現状です。そこで昨年度、我々は腎癌特異的腫瘍マーカーの開発のために、腎細胞癌細胞株由来のSAGE (Serial Analysis of Gene Expression) libraryを作成しました。SAGEとは、1サンプル(組織や腫瘍、細胞株など)内に存在する数千、数万の遺伝子発現情報を包括的かつ定量的に収集し、サンプル内の全てのメッセンジャーRNAの分布をバーチャルに再現する方法で、DNA chip(またはMicro Array)が既知の遺伝子のスクリーニングに限られているのに対し、未知の遺伝子の同定や、多遺伝子間の比較、定量的な評価が可能であり、現在注目を集めている手法です。本年度は、昨年度作成した腎癌組織のSAGE libraryが解析に耐えうる品質のものであるか評価を行い、解析を開始しました。解析は現在進行中ですが、既に昨年中にある程度解析を終えた腎癌の正常originとされる腎尿細管細胞由来のSAGE libraryと比較することにより、腎細胞癌に特異的に高発現している遺伝子を幾つか同定しました。さらにその遺伝子の中から、血中に分泌されることが予想される構造を持った蛋白をコードする遺伝子を選択し、書面にて同意を得た腎癌患者より採取した血液を用いて臨床的にその有効性の確認を開始しました。さらに、来年度は蛋白2次元泳動を利用したプロテオミクスで得られた蛋白の発現パターンと、SAGEによって得られたメッセンジャーRNAの発現パターンの比較を行いたいと考えています。臨床上有用な腫瘍マーカーを同定できれば、早期診断、経過観察、治療効果の判定、さらにこれらの情報にもとずく新たな治療体系の確立を含め幅広く活用されうると考えています。