Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
これまではDAX-1は主として性分化における位置づけが検討されてきた。今回の我々の検討では、DAX-1が実際にどのように精子形成に関わっているか検討した。1歳児より思春期、成人、老年期にいたる正常精巣における発現およびHypospermatogenesis、Maturation arrest、Sertoli only syndrome患者それぞれの精巣組織におけるDAX-1の発現の程度について検討した。まず、ヒト正常組織におけるDAX-1の発現について検討した。免疫組織染色の結果から、ヒト精巣においてもDAX-1はセルトリ細胞およびライディッヒ細胞に発現しており、精子形成細胞には発現していなかった。また免疫組織染色およびRT-PCRの結果から、DAX-1は1歳男子の精巣においては、強い発現を認めたが、その後発現の減少を認めた。その後、思春期に至る12-15歳頃よりその発現は増加し、老年期までその発現は続いた。次に造精機能障害患者精巣におけるDAX-1の発現について検討した。Hypospermatogenesis、Maturation arrest患者における精巣においてはDAX-1の発現は正常精巣と比較して有意な変化は認めなかった。しかしながらSertoli only syndrome患者精巣においてはその発現の減少を認めた。これらのことは、DAX-1は精子形成に関与していることを示すものであり、特にSertoli only syndromeにおいて発現の減少を認めたことは、Sertoli細胞の機能異常を反映した結果と思われた。