Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
生体では、主に余剰エネルギーの蓄積に関する白色脂肪組織と、余剰エネルギーの放散に関与する褐色脂肪組織の二種類の脂肪組織が存在する。これらは全身のエネルギー代謝の調節を行う組織であり、これらの機能異常は生活習慣病の発症原因となる。代表者は脂肪組織形成過程におけるFGF(線維芽細胞増殖因子)の意義を明らかにすることを目的に実験を行った。代表者はFGFファミリー内、FGF-16が褐色脂肪組織に、FGF-10が白色脂肪組織に発現していることを明らかにした。特にFGF-16が胎生期の褐色脂肪組織に特異的に発現し、前駆褐色脂肪細胞の増殖を促進することを明らかにした。このFGF-16の発現パターン、及び活性は、他のFGFや分泌因子には無い独自のものであった。詳細にFGF-16の生体における機能を明らかにするために、現在FGF-16遺伝子欠損動物を作製中である。また代表者は同時にFGF-10が白色脂肪組織に発現していることを明らかにした。FGF-10遺伝子欠損マウスは出生直後に肺の欠損により死亡してしまうが、胎生期において白色脂肪組織の著しい形成不全が起きていることを明らかにした。さらに胎生期の前駆白色脂肪細胞の増殖、分化にFGF-10が必要であることを明らかにした。成体においても白色脂肪組織は発達を続ける。今後はFGF-10遺伝子ヘテロ欠損マウス等を用い、成体の白色脂肪組織の発達におけるFGF-10の役割について検討する予定である。以上、代表者は二種のFGFが褐色、白色の両脂肪組織の形成に関与することを明らかにした。得られた知見によりFGFが成体においても脂肪組織形成、あるいは代謝調節において重要な役割を持つことが期待される。今後成体における解析を進めることにより、肥満症や生活習慣病の発症メカニズム、治療法の開発に有用な知見が得られることも期待される。
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